出典:布刀玉命(Art Mochida Daisuke)
神社で見かける玉串や注連縄(しめなわ)のルーツとされる神さまです。天孫降臨では五伴緒の1人。忌部氏(後に斎部氏)の祖神とされます。占いや祭具、楮や麻の神さまとしても信仰され、人気の女神アメノウズメ命の父神です。産業の神でもあり、金運や商売繁盛などのご利益を備えます。
古事記 |
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布刀玉命(フトダマノミコト) |
日本書紀 |
太玉命(フトダマノミコト) |
古語拾遺 |
天太玉命(アメノフトダマノミコト) |
新撰姓氏録 |
天櫛玉命(アメノクシタマノミコト) |
別称 |
大麻比古命(オオアサヒコノミコト) |
占いの神 | 祭具の神 | 麻の神 |
楮の神 | 神事の神 | 産業の神 |
経済の神 |
災難除け | 厄除け | 方位除け |
縁結び | 商売繁盛 | 金運向上 |
占術向上 | 諸産業守護 |
父神 | 高御産巣日(タカミムスビ) |
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子神 | 天宇受売命(アメノウズメ) |
岩戸からアマテラス大神が出るところを構えるフトダマ
フトダマ命は神社で見かける玉串や注連縄(しめなわ)のルーツとさる神さまです。
天岩戸神話では、岩戸に隠れたアマテラス大神を誘い出すために洞窟の前で卜占(占い)を行い、続いて枝葉の茂った榊に、大きな曲玉を連ねた玉飾りと大きな鏡、楮(こうぞ)で織った白木綿(しらゆう)と麻で織った青木綿を下げ垂らし「大玉串」を作ります。
アメノフトダマ命はそれを捧げ持ち、同時に祝詞の神であるアメノコヤネ命がアマテラス大神を賛美する祝詞を奏上して大神の出現を願いました。
アマテラス大神が天岩戸から出てきたときに、すかさずフトダマ命が用意していた尻久米縄(注連縄)で岩戸の入り口を塞ぎます。これによりアマテラス大神が再び岩戸に隠れることなくこの世に太陽の光が満ちたとされます。
岩戸の入り口を締め切る注連縄は、この時まさにバリアの役目をしていますが、この場合は「光輝く日の神の居場所はこちらですよ」と、アマテラス大神の本来あるべき場所(聖域)を示すものともいえます。
玉串
玉串とは、榊の枝に紙垂(しで ※紙を細長くきったもの)を付けた供え物のことで、太玉串とは「立派な玉串」のことです。今日でも神社でお祓いを受けたり、地鎮祭などで、神主に祈祷をしてもらう際に玉串を捧げる習慣があります。
これは、神の意思に従う気持ちを表し、神とのコミュニケーションを確認するという意味で、玉串などの祭具というのは、神と人間が交信するための道具となります。
これを最初に作り出したアメノフトダマ命は玉串を作る時に楮や麻の糸で織った布を用いたことから、楮や麻の神さまとしても信仰されています。
注連縄は神社の鳥居や社殿に限らず、御神木や石などの御神体、あるいは神域とされる場所に張り巡らされています。注連縄が張られた空間の内側は、神が降臨して宿る場所を示していて、その神聖な空間のなかに不浄なものが入ることは厳禁とされています。
このように清浄と不浄を分かつ注連縄そのものにも、当然としてなんらかの霊力が宿ることとなります。それを示すのが注連縄につけられる紙垂です。注連縄には玉串に用いるのと同じ紙垂を垂らしますが、その紙垂そのものが神の寄り代と考えられています。
出典:フトダマ「月岡耕漁」
日本の神さまには、人間が神を祀るという行為そのものをルーツとする神格も多く、アメノフトダマ命もそういうタイプに分類されます。この神が作った玉串や注連縄は、神を祀る儀式には欠かすことのできない祭具です。
それを考案したこの神の性格は、祭祀の機能の神格化であり、それは古代の宮廷祭祀を司る祭官の職掌と一致しています。
天岩戸で活躍した後、アメノフトダマ命は天孫降臨に随伴して地上に降り、祭祀をつかさどる役目を果たした言われ、『日本書紀』では忌部氏の遠祖と記されています。
忌部氏というのは代々、宮廷における祭祀の執行を統括することを専門に担当した氏族で、宮廷での儀式に使うさまざまな祭具をつくる部門の管理も担当していました。
神話でこの神が太玉串をつくる場面は、そうした忌部氏の職務を象徴したものといわれています。
玉串も注連縄も要は神を祀る道具です。その一方で、特に注連縄は神聖な領域から不浄を遮断するという機能を発揮するもので、それは悪霊から守る霊力を持つと考えられます。
注連縄を生み出したアメノフトダマ命には、悪霊のもたらす災厄を除ける霊力が備わっているということになります。
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