猿田彦命(Art Mochida Daisuke)
国津神。天孫降臨神話に登場し、猿とも天狗ともいわれる怪奇な風貌をしています。天孫を道案内した故事から導きの神、道の神とされます。アメノウズメ命と結婚したことから縁結びの神としても有名。サルタヒコ命を祭神とする神社は全国に二千余社を数え、交通安全の守護神として警視庁にも祀られています。
古事記 |
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猿田毘古神(さるたひこのかみ) |
日本書紀 |
猿田彦命(さるたひこのみこと) |
別称 |
精大明神(つばきだいみょうじん) |
道の神 | 導きの神 | 国土の守護神 |
太陽神 |
延命長寿 | 開運 | 交通安全 |
商売繁盛 | 殖産興業 | 災難・方位除け |
縁結び |
妻神 | アメノウズメ命 |
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出典:猿田彦大神「椿大神社」
『日本書紀』には鼻の長さが約120センチもあり、背の丈は約200センチもあると記されます。口と尻は明るく光っていて、目は大きくて丸く、真っ赤な酸漿(ほおずき)のように照り輝いていると記されます。
一方『古事記』では「天にも地にもその光が届き輝かしく神々しい神」として描かれています。
サルタヒコ命は高天原から降ってくる天孫ニニギ尊の一行を迎えるために、天の八衢(やちまた)まで出向きました。ところが異様な風貌のせいで怪しまれてしまいます。
出典:猿田彦大神・天ノ臼女尊(日本の神様読み解き辞典)
この時、ニニギ尊に随行していたアメノウズメ命が、素性を問いただすように命じられてサルタヒコ命と対峙します。
アメノウズメ名が「おまえは何者か?」と問いただすと、サルタヒコ命は「天孫の道案内のために来た国津神です」と答えます。こうしたやりとりの後、先導を許され、ニニギ尊一行を日向の高千穂まで導いたとされます。
この話からサルタヒコ命は導きの神と考えられるようになります。
神輿渡御
神話の道案内役のイメージそのままに、この神の姿を今日でも神社の祭礼でみることができます。それは、鼻の高い天狗のような面をつけて、高下駄を履き、鉾をもった姿で神輿渡御の先導役の姿です。
神輿渡御とは、祭りの時に神さまが本殿から臨時の御旅所に御輿にのって移動することです。御輿は神の乗り物で、渡御は神幸、お渡りともいわれます。
出典:猿田毘古神「日本の神々辞典」
サルタヒコ命は三重県の伊勢・志摩地方に縁が深い神さまです。
ニニギ尊を先導した後、アメノウズメ命に送られて伊勢国の狭長田(さなた)の五十鈴川のほとりに帰ります。その地でアメノウズメ命と結婚し住んでいたとされます。
のちにアメノウズメ命はサルタヒコ命の名をとって猿女君を名乗り、猿女氏の祖神となります。猿女氏は伊勢地方を本拠とする海女の一族で、古くからサルタヒコ命を祖神として崇敬していました。
『古事記』では「上は高天原を照らし、下は葦原中国を照らす神」と記され、『日本書紀』ではその眼が「八咫鏡のごとく赫く」と記されます。八咫鏡は太陽神アマテラス大神の依り代とされるものです。
これらから容易に輝く太陽をイメージでき、サルタヒコ命がアマテラス大神以前に伊勢で信仰されていた太陽神だったと考えられます。その原像については原始的な男性の太陽神として伊勢の海人が信仰していた神だったという説が有力です。
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サルタヒコ命は「衢の神」、「境界の守護神」」とも呼ばれます。天の八衢で天孫を出迎えたように、その役割は道案内であり、航路の安全を守ること。
航路の神、道の神という基本的な性格から、サルタヒコ命はいろいろな民俗信仰と結びついています。とりわけ庶民的な人気を得ているのが道祖神としての顔です。
道祖神は基本的には邪霊を防ぐ神で、そこから塞の神、境の神として働きます。同時に道の神としての信仰もあり、通行する人の行路の安全を守るという機能から、道の神であるサルタヒコ命と結びついたと考えられます。
道祖神として路傍に祀られるようになると、江戸時代の中期頃からは庚申様とも習合しました。これは猿と申の共通性から、神道家によって結び付けられとものとされます。
さらに古代の性器崇拝と結びついた金精様も、サルタヒコ命の多様な顔の1つです。
金精様は道祖神信仰の性にまつわる部分だけを取り出したような神さまで、男女の縁結び、出産、性病治癒などの霊験ありとして信仰されています。
その金精様(金精大明神、金勢大明神)を祀る神社は各地にありますが、サルタヒコ命が祭神とされていることが多く、その理由はこの神と道祖神との結びつきからきています。
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サルタヒコ命は伊勢の阿耶訶(あざか※三重県松阪市)の海岸で漁をしているときに、比良夫貝(ひらふがい)に手を挟まれ、海に引き込まれて溺れて命を落とします。
巨躯なサルタヒコ命を海に引き込めるほど大きい貝なんてあるのかと考えさせますが、オオシャコガイと呼ばれる貝は大きいもので2mを越えるほど。
これにちなんでか三重県伊勢市に鎮座する二見興玉神社では、サルタヒコを祀るとともに沖縄産のオオシャコガイが置かれています。
サルタヒコ命は海に沈んでいる時に「底度久御魂(そこどくみたま)」、吐いた息の泡が海面に昇る時に「都夫多都御魂(つぶたつみたま)」、泡が水面で弾ける時に「阿和佐久御魂(あわさくみたま)」という三柱の神を生みます。
サルタヒコが生んだ三柱の神は阿射加神社(三重県松阪市大阿坂と小阿坂)に祀られています。
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