菊理姫(Art Mochida Daisuke)
石川県の白山比咩神社の主祭神。神話ではイザナギ神とイザナミ神が言い争いをしているところへ仲裁に入り、その場を上手にとりなす和合の神として記されます。菊理媛の「くくり」は「括る」とされ、「縁結びの神」また「縁切りの神」としても崇敬を受けています。
日本書紀 | 菊理媛神(くくり/きくりひめのかみ) |
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白山比咩神社 | 菊理媛尊(くくりひめのみこと) |
別称 |
菊理姫(くくり/きくりひめ) |
白山の神 | 農業神 | 延命の神 |
縁結びの神 | 穢祓いの神 | 和合の神 |
縁結び | 安産・育児 | 家内安全 |
開運招福 | 交通安全 | 入試合格 |
除災 | 生業繁栄 | 命名 |
五穀豊穣 | 牛馬安産 | 縁切り |
良縁成就 | 子孫繁栄 |
出典:菊理媛尊像「青木哥彦」
ククリヒメは『記紀』正伝には記されず、『日本書紀』異伝(第十の一書)の一場面にのみ登場します。
それは黄泉の国から逃げ出そうとしたイザナギと、それを追ってきたイザナミが黄泉平坂で言い争いをする場面です。
この時ククリヒメ神は、黄泉の国に通じる道の番人である泉守道者(よもつもりみちびと)と一緒に現れ、イザナギとイザナミ双方の話を聞いて、うまくこの場をとりなします。これによりイザナギは無事に帰ることができました。
ここでのイザナミは「死者の国」の代表者であり、イザナギは「生者の国」の代表者です。両神の仲介役としてそれぞれの言葉を聞き、調和を図るククリヒメノ神の姿は、神と人間の間に立って託宣を受ける「巫女」を連想させます。
このとき菊理媛神が何を言ったかは記されていませんが、喧嘩を仲裁したことで和合の神。また、キレイに縁を切ったことから縁切りの神ともされます。
ククリヒメ神は、加賀の霊峰白山を御神体とする白山比咩神社の祭神で、周辺に住む人々から「いのちの親神」と崇敬されてきた女神です。
山が御神体であることから、山の神オオヤマヅミ神と同様に、ククリヒメも山の神の神格を備えます。
日本の民族信仰では、山は祖先の霊が宿る他界であるとされました。そのため山の神とは祖先の霊であり、生活を守ってくれる神でもありました。
ククリヒメノ神の原像は、山の神に仕える巫女が神格化されたものと考えられています。
巫女の役割は祖先の霊の声を聞くこと、つまり霊と交信する役目としてイタコが連想されます。
イタコは死者や祖霊の言葉を伝える者で、主に東北地方で霊との交信を生業にしていた人たちです。
ククリヒメ神は、生者と死者、互いの意見を聞くイタコの祖神ともいえるでしょう。
白山 剣ヶ峰(左)御前峰(右)
ククリヒメ神は白山権現という名も持ちます。白山権現は、白山の山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神さまです。十一面観音菩薩を本地仏とし、白山大権現、白山妙理権現とも呼ばれます。
その神霊は全国の二千七百もの社に勧請され、神仏分離・廃仏毀釈が行われる以前は、全国の白山権現社で祀られました。
最高峰の「御前峰」、「大汝峰」、「剣ヶ峰」の白山三峰を中心とした周辺の山峰の総称です。
白山は多くの霊山と同様、古くは人間が足を踏み入れることが許されない禁足の山でした。
養老元年(717年)に越前の修験者「泰澄」が、御前峰に登拝して山頂に祠を祀って以来、日本を代表する神仏習合の霊山として崇敬を集めます。
伝承によると、越前や加賀の窟で修行に明け暮れていた泰澄は、あるとき女神の示現にあい、「私は白山妙理権現である。私の真の姿が見たければ白山山頂に来たれ」と告げられます。
人跡未踏の山頂に到達した泰澄は、山頂近くの「転法輪の岩屋」にて祈ります。すると翠ヶ池から火を吐きながら九頭竜があらわれますが、泰澄がさらに祈ると龍はその身を変じ、女神の本地仏である十二面観音が神々しい姿てあらわれたとされます。(別伝には伊弉冉尊から十二面観音へと変じたとも伝えられる)。
泰澄に顕われた三神(白山妙理権現、大行事権現、大汝権現)を併せて「白山三所権現」と称し、さらに白山修験が隆盛すると、白山妙理権現の眷属として五王子権現も祀られます。
旧称 | 本地 |
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白山妙理権現 | 十一面観音菩薩 |
大行事権現(垂迹は菊理媛神) | 聖観音菩薩 |
大汝権現(大己貴命) | 阿弥陀如来 |
旧称 | 本地 |
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太郎王子 | 不動明王 |
次郎王子 | 虚空蔵菩薩 |
三郎王子 | 地蔵菩薩 |
四郎王子(毘沙門天) | 文殊菩薩 |
五郎王子 | 弥勒菩薩 |
三馬場のうち、加賀国の白山寺白山本宮は廃寺。白山比咩神社に強制的に改組されます。越前国の霊応山平泉寺も同様に廃寺となり、平泉寺白山神社に改組されます。
美濃国の白山中宮長滝寺は廃寺は免れたものの、長滝白山神社と天台宗の長瀧寺に強制的に分離される形となりました。
全国の白山権現社の多くは、菊理媛神を祭神とする神道の白山神社となっています。
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