『記紀』神話に登場しませんが、神道の大祓詞や様々な古書に記される女神。祓戸大神(祓戸四神)の一柱で、罪や穢を海へ運ぶとされます。天照大神の荒御魂、禍津日神、龍神など、同一神とされる神も多く、謎が多い神。
大祓詞 |
瀬織津媛(せおりつひめ) |
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別称 |
天照大神荒魂(あまてらすおおかみあらたま) |
祓神 | 水神 | 龍神 |
滝神 | 川の神 | 治水神 |
浄化 | 治水 | 水難除去 |
金運向上 | 子授け・安産 | 厄除け |
文学歌謡 | 立身出世 | 交通安全 |
瀬織津姫は祓戸四神(祓戸大神)の一柱として、『延喜式』の「六月晦大祓の祝詞」に記されています。
これらの神は、国のあらゆる罪・穢を祓い去る神とされ、神職が祭祀に先立って唱える祝詞の中でも最も格式高い「大祓詞」に役割が記されています。
遺る罪はあらじと、祓えたまい清めたまう事を、高山の末、短山の末より、サクナダリに落ちたぎつ、速川の瀬にます、瀬織津姫という神、大海原に持ちいでなむ。かく持ちいでいなば、荒潮の潮のやおじの、やしおじの潮の、やおあいにます、速開都姫という神、持ちカカ呑みてむ。かくカカ呑みてば、気吹戸主という神、根の国、底の国にいぶきはなちてむ。かくいぶきはなてば、根の国、底の国にます、速佐須良姫という神、持ちさすらいうしないてむ。「六月晦大祓」より
瀬織津比売 | 禍事・罪・穢れを川から海へ流す |
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速開都比売 | 河口や海の底で待ち構え流れてきた禍事・罪・穢れを飲み込む |
気吹戸主 | 禍事・罪・穢れを飲み込んだのを確認した後根の国・底の国に吹き放つ |
速佐須良比売 | 根の国・底の国に届いた禍事・罪・穢れをさすらって失う |
禊は「身削ぎ」ともされ、身の垢を削ぎ落し清めることです。
『大祓祝詞』には、削ぎ落ちた罪穢れを、セオリツヒメが遠くの海に運び、ハヤアキツヒメが海で飲み込み、イブキドヌシが吹き放ち、ハヤサスラヒメがさすらう。
これら祓いの神により、罪穢れを背負って生まれてくる者がいないとされます。
「祓う」というのは「禊をして新しく生まれ変わる」こと。瀬織津姫は穢を「水に流してくれる」祓いの女神です。
瀬織津姫は神話に登場することがなく、その素性がはっきりしません。しかし、大祓詞に記されるように重要な神であることは間違いありません。
瀬織津姫の正体とされるものと、同一視される神々をまとめました。
荒御魂とは、神の荒々しい側面、荒ぶる魂です。同一の神であっても別の神に見えるほどの強い個性の表れであり、別の神名が与えられたり、別に祀られていたりすることもあります。
神道五部書と呼ばれる『伊勢二所皇太神宮御鎮座伝記』、『倭姫命世紀』、『天照坐伊勢二所皇太神宮御鎮座次第記』には、瀬織津姫神は天照大御神の荒魂と記されます。
また、『中臣祓訓解』には、瀬織津姫命は祓いの神八十柱日神であり、かつ、天照大御神の荒魂であるとしている。
さらに、天照大神荒魂を祀る「廣田神社」の戦前までの由緒書には「玉祭神の天照大神荒魂(撞賢木厳之御魂天疎向津媛命)は瀬織津姫である」というように、瀬織津姫は天照大神の荒御魂ということが様々な書に記されている。
神代文字を使用した『ホツマツタヱ』には、アマテラスの妃の一人が瀬織津姫とあり、後にアマテラスが瀬織津姫を正妻として「内宮」に迎え入れたことで「向津姫」なると記されています。
この『ホツマツタヱ』とは、神代文字の一種「ヲシテ文字」で書かれた古史古伝の一つです。
しかし、その存在は江戸時代中期までしか遡れないことから偽書であるとされていますが、一方では記紀の原典となった真書であるとする主張もあるようです。
『倭姫命世記』では八十禍津日神の別名は瀬織津姫とされます。
国学として古事記などを研究し、古神道を独自に解釈し復古神道を構築した本居宣長は、禍津日神と瀬織津比売神は同神と定めています。
また、伊勢神宮内宮第一別宮の荒祭宮祭神の別名として瀬織津姫、八十禍津日神を記しており、石川県金沢市にある瀬織津姫神社でも、祀られる八十禍津日神の別名は瀬織津姫と記される。
災厄の神霊とされる禍津日神と、災厄を祓う瀬織津姫。同じ神として扱われるのが謎です。
瀬織津姫は水神とされることから、龍神(白龍)の化身とも言われています。同じように弁財天も水に関わる女神とされることから龍と関連付けられます。
ミズハノメ神、タカオカミ神、クラミツハ神など、水に関わる神多くの神は、龍神として信仰されるものが多く、瀬織津姫も龍神と結び付けられるのは自然なことなのでしょう。
封印というより神話に登場しない理由ですね。
なぜ、瀬織津姫が『神話』に記されないのでしょうか。
『日本書紀』は、『帝紀』、『旧辞』など古い書物をもとに編集された書です。帝紀や旧辞には古字が多くて理解しづらく、また様々な異伝が存在します。
瀬織津姫の伝承は各地に残っており、宮崎県速川神社ではニニギの天孫降臨の共の一柱と記され、また、同県の御霊神社では、神武東征に同行したと記されます。
異なる時代に登場する瀬織津姫に、編集者はその存在自体を疑ったのか。日本国の歴史を示すため、正確さに重点が置かれた日本書紀に記すことが難しかったのかもしれません。
そもそも神話は、天皇が神様の子孫であることを知らしめるために書かれたもの。瀬織津姫は豪族の氏神でもなく、さほど重要視されなかったため神話から外されたのかもしれませんね。
瀬織津姫が『神話』に記されないのは、大和朝廷にとって都合が悪かったからという説があります。
『古事記』が編纂された時代の天皇は史上三人目の女性天皇である「持統天皇」。持統天皇の時代は、藤原氏が勢力を伸ばし、天皇家の権力は弱まっていました。
そこで持統天皇は支持を集めるために、八百万の神々の最高位に位置する天照大神を女神とし、女性天皇の正統性を示そうとします。
男神であったアマテラスが女神となったことで、それまで正妃として祀っていた瀬織津姫が都合が悪く、その存在を意図的に消したとのではと推測されます。
『ホツマツタヱ』に日本神話の改変を裏付けるような記載、『古事記』の編纂時代の背景も相まって、どこか信憑性を感じさせるものとなっています。
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滝廼神社 | 北海道桧山郡厚沢部町字滝野355番地 |
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川口神社 | 青森県八戸市湊町館鼻43-3 |
日住白山神社 | 秋田県由利本荘市鮎瀬字石橋山124 |
早池峰神社 | 岩手県遠野市附馬牛町上附馬牛19-82 |
一ノ滝神社 | 山形県飽海郡遊佐町吉出懐ノ内2-2 |
瀧澤神社 | 宮城県仙台市青葉区本町2-11-7 |
宇奈己呂和気神社 | 福島県郡山市三穂田町八幡字上ノ台76 |
櫻川磯部稲村神社 | 茨城県桜川市磯部779 |
荷渡神社 | 栃木県下都賀郡岩舟町曲ケ島1416 |
三騎神社 | 栃木県佐野市船越町2828 |
桐生天満宮 | 群馬県桐生市天神町1-2-1 |
波羅比門神社 | 埼玉県大里郡寄居町西ノ入738 |
大原神社 | 千葉県流山市平和台4-1650-1 |
武蔵國一之宮小野神社 | 東京都多摩市一ノ宮1-18-8 |
日比谷神社 | 東京都港区東新橋2-1-1 |
一之宮社 | 神奈川県横浜市神奈川区入江1ー13ー16 |
瀬寄社 | 新潟県阿賀野市六野瀬2200 |
雄神神社 | 富山県砺波市庄川町庄字広谷6446 |
瀬織津姫神社 | 石川県金沢市別所町ヲ83 |
川上神社 | 福井県福井市志比口1-3-9 |
船宮神社 | 山梨県甲州市塩山平沢113 |
尾片瀬神社 | 長野県諏訪郡富士見町富士見芋木字村上3995 |
瀧神社 | 岐阜県美濃市乙狩字クェタテ2218 |
瀧川神社 | 静岡県三島市川原ヶ谷755-1 |
池宮神社 | 静岡県御前崎市佐倉5162 |
槻神社 | 愛知県北設楽郡東栄町月寺甫7 |
片山神社 | 三重県亀山市関町坂下 624 |
佐久奈度神社 | 滋賀県大津市大石中1-2-1 |
橋姫神社 | 京都府宇治市宇治蓮華47 |
建水分神社 | 大阪府南河内郡千早赤阪村水分357 |
井関三神社 | 兵庫県たつの市揖西町中垣内甲799-1 |
六甲比命大善神社 | 兵庫県神戸市灘区六甲山町北六甲 |
廣田神社 | 兵庫県西宮市大社町 7-7 |
姫大神社 | 奈良県天理市森本町205 |
荒島神社 | 和歌山県田辺市龍神村甲斐ノ川603 |
美幣奴神社 | 鳥取県八頭郡八頭町篠波424 |
春日神社 | 島根県益田市高津町203-2 |
早瀧比咩神社 | 岡山県玉野市滝773・774 |
清瀧神社 | 広島県福山市神辺町平野999-2 |
中津瀬神社 | 山口県宇部市新天町2-2-19 |
屋那瀬神社 | 徳島県名西郡神山町 阿野屋那瀬162 |
落合神社 | 香川県仲多度郡まんのう町勝浦字長谷2349 |
湊三嶋大明神社 | 愛媛県松山市港山町5-18 |
織會神社 | 高知県吾川郡仁淀川町大植2892 |
瀬成神社 | 福岡県田川郡添田町中元寺 |
闇無濱神社 | 大分県中津市竜王町447 |
佐久奈止神社 | 長崎県西海市西海町水浦郷680 |
速川神社 | 宮崎県西都市大字南方183-2 |
祓戸神社 | 鹿児島県霧島市国分府中町14-17 |
上記神社では「瀬織津姫」と祭神表記している神社をまとめていますが、瀬織津姫は、撞賢木厳之御魂天疎向津媛命・天照大神荒魂・八十禍津日神・祓戸大神等多くの異称表記されています。
伊勢神宮 | 三重県伊勢市宇治館町1 |
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御霊神社 | 大阪府大阪市中央区淡路町4-4-3 |
山口大神宮 | 山口県山口市滝町4-4 |
朝宮神社 | 徳島県名東郡佐那河内村 |
和布刈神社 | 福岡県北九州市門司区門司3492 |
闇無濱神社 | 大分県中津市竜王町447 |
他にも多くの神社で天照大神荒魂としての瀬織津姫が祀られています。
「祓社」出典:出雲大社
大きめの神社には、祓社(はらいのやしろ)と呼ばれる小さな社があります。
参拝する前に穢れを祓う場所で、ここでは人や世の禍事と罪、穢れを祓う瀬織津姫を含めた祓戸四神が祀られています。
祓社では祈願することよりも、無事に参拝にこれたことや、健康で生きていることに感謝し、自身の汚れを祓うことがよしとされています。
お近くに瀬織津姫を祭神として祀る神社がなくても、祓社のある神社に行けば瀬織津姫に会えますね。
宮崎県日之影町の日之影川の楠原に「こうもり岩屋」という洞窟があります。こちらは太古の昔、「瀬織津姫」の生まれた所と伝わります。
また、静岡県三島市にある「瀧川神社」も出生地として紹介されています。さらに、大分県の闇無浜神社には、霊烏石と呼ばれる石があり、ここに瀬織津姫神が白い烏の姿で降りてきたと伝わるそうです。
各地に点在する瀬織津姫の出生地。どれが本当なのかこちらも謎です。
瀬織津姫のお墓は、宮崎県の御陵神社はの下にあるとされる。
ちなみに瀬織津姫の誕生日は、旧暦の3月3日(西暦で4月22日)とされているようです。
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