磐長姫(Art Mochida Daisuke)
山の神大山津見神の娘で、木花咲耶姫の姉。名前の通り、岩のように堅固で永久不変を象徴する神さまです。神話では、美人の木花咲耶姫と対象的に不美人として描かれ、その容姿のためにひどい失恋をします。日本の国歌「君が代」の歌詞のモチーフになったともされる神さまです。
古事記 | 石長比売(イワナガヒメ) |
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日本書紀 |
磐長姫(イワナガヒメ) |
別称 |
木花知流比売(コノハナチルヒメ) |
岩石の神 | 寿命長久の神 |
イワナガヒメは岩のように堅固で永久不変なことを象徴する女神です。名前の「磐」の字は常磐の意味で、常に青々としていてめでたい常磐木などと使うように、そこには生命長久の観念が込められています。岩石の神というといかにも無骨なイメージが持たれますが、この神が寿命長久の神とされるようになった理由もそこにあります。
延命長寿 | 縁切り | 縁結び |
安産 | 子孫繁栄 | 家内安全 |
海上安全 |
ニニギ尊に振られ、酷い失恋をしたにもかかわらず「人々の良縁を授けよう」と尽くされた女神。そのため恋愛や縁結びのご利益が絶大とされます。結婚して子孫に恵まれたことからも、結婚や安産のご神徳も。永久不変の石・岩の名を持つことから、長寿のご利益もあるとされます。
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父神 | 大山津見神(オオヤマツミ) |
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母神 | 鹿屋野比売神(カヤノヒメ) |
妹神 | 木花咲耶姫(コノハナサクヤ) |
出典:磐長姫「Art Mochida Daisuke」
『古事記』によると、瓊瓊杵命が木花咲耶姫に結婚を申し込んだ際に、喜んだ父神の大山津見神は姉のイワナガヒメを一緒に差し出します。しかし、容姿が醜いからとニニギはすぐに彼女だけを追い返します。
これを知ったオオヤマヅミ神は「イワナガヒメノを差し上げたのは、ニニギ尊の命が岩のように永久不変であることを願ってのことです。妹のコノハナサクヤ命を差し上げたのは、木の花が咲くように栄えることを願ったものです。姉だけを返したニニギ尊の命は、木の花が散るようにはかなくなることでしょう」と告げます。
『日本書紀』では、ニニギに嫌われたイワナガヒメ命は恨みに思い、後にコノハナサクヤ命が妊娠した時に「私を妻に選んでいたら生まれる子供は岩のように長い寿命を得られたのに、妹の子では木の花のごとくはかなく散るでしょう」と呪ったとされます。
この出来事によって、ニニギとその子孫の寿命が短命になったというのは『記紀』ともに共通しています。
怒りや嫉妬による呪い言葉として受け取れば、嫉妬深い山の神さまの姿が想像できますが、この言葉はやはり永久不変を象徴する岩の神としての性格が示されています。
『古事記』では、ニニギから遠ざけられた後、素戔嗚命と櫛名田姫の子である八島士奴美神と結婚します。
婚姻を結ぶ際にイワナガヒメは木花知流比売という名で登場。オオヤマツミ神の娘ということから、イワナガヒメとコノハナチルヒメは同一神と見られます。
夫神のとの間に布波能母遅久奴須奴神が生まれ、その5代後に出雲の英雄の大国主が生まれたとされます。
ひどい失恋がありましたが、最後にはめでたく結婚して子も授かったイワナガヒメ。ハッピーエンドで良かったですね。
出典:貴船神社
京都市の貴船神社にはイワナガヒメが合祀されています。
貴船神社の伝承によると、ニニギ尊がコノハナサクヤヒメだけを望み、イワナガヒメが大いに恥じた後に「吾ここに留まりて人々の良縁を授けよう」と言い、この地に鎮座したとあります。
自分同じ思いをする人が現れないように、縁結びの神様になったんですね。
平安時代には女流歌人「和泉式部」が、夫の心変わりに思い悩んでいた時に貴船神社へ参拝していたそうです。
「恋の宮 男女を結ぶ神 遠く都のはじめより 結社とたたえけり」
和泉式部がこの歌を捧げ祈ったところ願いが叶い、愛する夫と復縁します。
以来、イワナガヒメを祀る結社は「恋の宮」と呼ばれるようになったそうです。
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さざれ石
君が代は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで
誰もが知る日本の国歌の君が代。幾重にも石に例えて歌われていることから、イワナガヒメをモチーフにしたという説があります。
和歌である君が代は様々な解釈ができますが、歌詞だけを見ると「石」→「巌」→「苔むした巌」と石に例えて長寿を重ねる様を表しています。
イワナガヒメは石(岩)の神であると同時に長寿の神様です。さらに「苔牟須売神(コケムスヒメ)」という別名もあります。
考えてみると、イワナガヒメをないがしろにしたことで短命となったニニギノミコト。その子孫の国歌が、「細石が巌になり苔むすまで」と長寿を讃え祈る歌詞となったのは必然かもしれません。
出典:宮崎観光写真「銀鏡神社」
『日向神話』によると、自分だけ帰されたイワナガヒメはこの境遇に嘆き、自分の姿を写す鏡を遠くに放り投げ米良の山に籠りました。
イワナガヒメが投げた鏡は、米良山中の龍房山(りゅうぶさやま)の大木の枝に引っかかり、太陽光と月光を浴びて白く輝いていたそうです。
鏡が「白く見えた」ということからこの場所は白見村と呼ばれ、後にその鏡が銀の鏡だったことから銀鏡村(しろみむら)という地名になりました。
後にイワナガヒメが投げた鏡は村の者が持ち帰り、現在の西都市銀鏡神社の御神体として祀られています。
ちなみに山に籠っていたイワナガヒメですが、食べていくために山の中で田んぼ拓きます。その田んぼではとてもおいしいお米(良い米)が採れたことから「米良」という地名になったそうです。
出典:伊豆・伊東ガイド「大室山から富士山」
イワナガヒメだけを祀る神社は、雪見浅間社や大室山浅間神社、伊豆神社があります。
しかし、その数は少なく、全国の他の浅間神社ではイワナガヒメ命とコノハナサクヤ命が共に祀られています。
雲見浅間神社と大室山浅間神社にイワナガヒメのみ祀られているのは、富士山の化身とされるコノハナサクヤヒメと対峙しているからだそうです。
古くから伊豆地方では、イワナガヒメの化身である「大室山」でイワナガヒメに同情したり、コノハナサクヤの「富士山」を褒めると、怪我をしたり不漁になるという俗信があるそうです。
うーん。山の神は嫉妬深い。
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