阿遅鉏高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)
別称
- 味耜高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)
- 迦毛大神(かものおおかみ)
神格
- 雷神
- 農耕神
ご利益
- 農業守護
- 不動産の守護
- 家内安全
- 商売繁昌
- 縁結び
- 文筆業の守護(土佐神社)
関連神
- 友神:アメノワカヒコ命
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阿遅鉏高彦根命はどんな神さま?
天地を往来する雷神の姿
アジスキタカヒコネ命は、国譲り神話にアメノワカヒコ命の友人として登場する美青年の神さまです。名前のスキは、農具の「鋤すき」から連想されたもので、もともとは鋤を御神体とする農業神だったようです。
『古事記』では、友人のアメノワカヒコ命の葬式に天界から弔問に訪れたアジスキタカヒコネ命は、その姿が瓜二つだったことから死者が生き返ったと間違われてしまいました。それで、「穢らわしい」と激怒したアジスキタカヒコネ命は、長い剣で喪屋を切り倒し、足で蹴り飛ばして天地に飛び去ったといいます。
このときの激怒ぶりや天地を行き来する姿は、雷神をイメージさせるものです。さらに『出雲国風土記』のこの神さまの養育に関する説話では、アジスキタカヒコネが幼い頃、昼夜泣きやまなかったので船に乗せて八十島やそじまを巡ったり、高屋を作って梯子を掛けてそれを上り下りさせて育てられたといいます。
古代の人々は、雷鳴が天空を駆け巡る様子から雷を天翔ける船(神の乗り物)と考えて、強烈な落雷からは天地を往来する雷神の姿を連想したのです。
鋤と雷の霊力が合体した農耕神
農具の鋤は、田の神さまを祀るときの呪具でもありました。鋤と雷との関係を示す説話に、『日本霊異記にほんりょういき』の道場法師の話があります。
昔、農民が畑で金杖(鋤?)を持って立っていると、突然、雷雨が襲い目の前に落雷しました。そのあとに頭に蛇を巻きつけた不思議な姿の子どもが立っていました。
その子どもは、のちに元興寺の童子となって、やがて出家して道場法師と名乗りました。そして、元興寺の田が渇水に悩まされていたとき、鋤柄の杖を水門の口に置いて田に水を引き入れるという霊妙な力を発揮したといいます。
鋤は神霊の依り代として機能し、そこに宿るのは雷神=水の神です。道場法師の不思議な霊力の発揮は、農耕を助ける鋤と雷神の霊力を結びつけたものです。
こうしたエピソードとして伝えられているくらいだから、鋤と雷との密接な関係は、農民の間でもかなり一般的な信仰としてあったものと考えていいと思います。
大和の葛城山かつらぎやまに宿る神霊
アジスキタカヒコネ命は、別名カモ大神と呼ばれています。その本拠は大和(奈良県)の葛城(現在の高鴨神社のある地)といわれ、『続日本紀』に次のような話があります。
雄略天皇が葛城山で狩猟をしたとき、土地の老漁師が天皇と獲物を取り合って争いました。怒った天皇はその漁師を他国に追放しましたが、のちにそれが葛城山に宿る神霊だったことが分かり、その地に手厚く祀りました。
それが葛城の豪族の鴨氏の祀る高鴨神(カモ大神)だといいます。この話は、大和朝廷の勢力と出雲系の神さまを信仰する人々との衝突を反映したものではないかと考えられています。
神武天皇の大和入りを導いた太陽の光の化身である三本足のカラスのヤタガラス(カモタケツヌミ)とも同一視されています。
祀られている神社
都々古別神社
福島県東白川郡棚倉町大字八槻字大宮224
比売許曽神社
大阪府大阪市東成区東小橋3-8-14
宇和津彦神社
愛媛県宇和島市野川新13
鳴無神社
高知県須崎市浦ノ内東分
二荒山神社
栃木県日光市山内2307
高鴨神社
奈良県御所市鴨神1110
土佐神社
高知県高知市一宮しなね2-16-1
仁壁神社
山口県山口市三の宮2-6-22