保食神はどんな神さま?描かれる姿と伝承。ご利益と神社も紹介

保食神

保食神(Art Mochida Daisuke

保食神(ウケモチノカミ)とは?

『日本書紀』では保食神と呼ばれ、食物を司る神として描かれます。『古事記』ではイザナギ神・イザナミ神の「神産み」から生まれます。神名の大宜都比売(オオゲツヒメ)とは「大いなる食物の女神」という意味です。記紀でスサノオとツキヨミに切られ、死体から様ざまな穀物を生み出した食物神です。

 

ウケモチノカミの名称・神格・ご利益

名称

古事記

大宜都比売(オオゲツヒメ)
大気都比売神
大宜津比売神
大気津比売神

日本書紀
保食神(ウケモチノカミ)

神格

食物神 農業神 蚕の起源神
牛馬の神

ご利益

農業守護 漁業守護 開運招福
災難厄除け 航海安全 縁むすび
子宝 安産 出世
家内安全
あなたの「金運」を強力に引き上げる祈祷師の護符

関連神

親神 伊邪那岐命・伊邪那美命(古事記)
子神 乙子狭姫(※石見地方の伝承)

世界に五穀をもたらした豊穣の神さま

大気都比売神

大気都比売神(Art Mochida Daisuke

 

古事記ではスサノオに。日本書紀ではツキヨミに切られる

『古事記』においては、スサノオ命が保食神殺害の話として、ほぼ同じように語られています。

 

高天原を追放されたスサノオ命は、食べ物を求めて姉神であるオオゲツヒメを訪ねます。オオゲツヒメはおもむろに様々な食物をスサノオ命に与えました。

 

しかし、それを不審に思ったスサノオ命は、食事を用意するオオゲツヒメをこっそり除きます。すると、オオゲツヒメは鼻や口、お尻から様々な食物を出して、それを調理していました。

 

スサノオ命はその行為を汚らしいと怒り、オオゲツヒメを斬り殺してしまいます。すると、オオゲツヒメの体から稲、粟、麦、小豆や大豆などが生えます。それをカミムスビ神が回収したとされます。

 

『日本書紀』では五穀起源神話に登場します。アマテラス大神に食物神であるのウケモチ神の様子を見てくるよう命じられたツクヨミ命。訪ねると、喜んだウケモチ神は口から魚や獣、ご飯を出し、それらを豪勢に机の上に盛りあげてもてなします。

 

ところが、ツキヨミ命は喜ぶどころか「口から出した汚いものを食わせるのか」と怒り狂い、剣で斬り殺してしまいました。ことのなりゆきをアマテラス大神に報告すると、アマテラス大神は怒ってツクヨミ命と永久に決別することを宣言したそうです。

 

このことから太陽と月は昼と夜とに別れて出るようになったとされます。

 

その後、アマテラス大神に派遣された天熊人(あめのくまひと)が様子見に行くと、ウケモチ神の死体の頭頂から牛馬、額に粟、まゆの上に蚕、目のなかに稗、腹のなかに稲、陰部には麦と大豆が生じていました。

 

それらを持ち帰りアマテラス大神に献上すると、大いに喜び「これは人々が生きていくために必要な食物だ」と言って、田や畑の作物や養蚕の種にしたそうです。

 

死から実りを生む食物の神

日本書紀、古事記いずれにしても斬り殺されてしまいますが、共通しているのは切られた後に五穀の恵みをもたらした事です。

 

この死から豊かな実りが生じるという考え方は、東南アジア、中南米、アフリカなど世界各国の神話にみられます。

 

いずれの伝承にも、山を焼いて芋や粟などの雑穀を育てる焼畑農耕がベースになっていると言われます。

 

日本には稲作文化が普及する以前にそうした伝承が伝わり、のちの弥生時代になってから稲作農耕の話が加わったものが、この食物起源神話であると考えられています。

 

ちなみにオオゲツヒメから生じるのが穀物なのは、日本では穀物が主に栽培されていたためと考えらます。

 

大自然の営みを表すもので、例えば春夏秋冬の季節で見れば、植物が枯れ果てる冬は死をイメージします。しかし生命は荒涼とした大地の中で息づいており、厳しい冬を乗り越えれば春が訪れ、夏を経て秋には豊かな実りに恵まれます。

 

オオゲツヒメは破壊と再生という自然の循環から生まれる実りを体現した女神と考えられます。

おもてなし精神からお寿司屋さんの神さまに

オオゲツヒメ

出典:大宜都比売神「日本の神々辞典」

 

食文化という面から神話を見てみると、オオゲツヒメ神がスサノオ命、ツクヨミ命にもてなすサービスとして、海の幸や山の幸をそろえて提供するというのは、まさに弥生時代の人々が得ていた食べ物の豊かさを象徴しています。

 

さらに、そうしたオオゲツヒメ神のおもてなしには、新鮮の食べ物を「料理」するという意味も含まれてくるとも考えられます。食料が豊富になれば調理技術も発展します。

 

そういった意味ではオオゲツヒメ神はバラエティ豊かな食文化のルーツという一面があり、新鮮な食材を調理するお寿司屋さんの神さまとして人気なのも納得できますね。

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保食神を祀る神社

岩内神社 北海道岩内郡岩内町字宮園41
猿賀神社 青森県平川市猿賀石林175
白子神社 山形県米沢市城北2-3-25
竹駒神社 宮城県岩沼市稲荷町1-1
箭弓稲荷神社 埼玉県東松山市箭弓町2-5-14
建穂神社 静岡県静岡市葵区建穂271
犬頭神社 愛知県豊川市千両町糸宅107
亀山八幡宮 長崎県佐世保市八幡町3-3
金立神社 佐賀県佐賀市金立町大字金立2467
上一宮大大粟神社 徳島県名西郡

 

食物神、蚕の起源神にちなみ農業や漁業、狩猟の神、また全国の蚕神を祀る神社の祭神とされています。

 

しかし、単独で主祭神として祀られることはほとんどなく、穀物神のウカノミタマ神と同一神とされて稲荷神社に祀られている場合が多いようです。

 

また、「頭から牛馬が生まれた」ということから牛や馬の神ともされ、駒形神社では馬の神として保食神が祀られています。

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