波邇夜須毘売神(Art Mochida Daisuke)
伊耶那美命の大便から生まれた二柱。『古事記』では波邇夜須毘古神・波邇夜須毘売神。『日本書紀』では埴安神と記されます。土の神、陶器の神とされます。ミズハノメと合わせて肥料の神、厠の神として祀られることもあります。
古事記 |
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波邇夜須毘古神(はにやすびこのかみ) |
日本書紀 |
埴安神(はにやすのかみ) |
先代旧事本紀 |
埴山彦(はにやすびこ) |
別称 |
土安神 |
土の神 | 陶器の神 | 肥料の神 |
鎮火の神 | 田畑の守護神 |
開梱守護 | 製陶業守護 | 土木業守護 |
農業守護 | 子宝 | 安産守護 |
イザナミ神の病によって生まれた神々(古事記)
イザナミ神の病床では、ハニヤスビコ神とハニヤスビメ神のほかにも、さまざまな神々が生まれました。
嘔吐物から金山毘古神と金山毘売神。尿から弥都波能売神と和久産巣日神。和久産巣日神の御子が、五穀豊穣の神として知られる豊宇気毘売神となります。
生み神 | 伊邪那美命(イザナミノミコト) |
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出典:埴山彦神・埴山姫神「日本の神々辞典」
埴安神とは波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神二柱の総称です。田植えをする神々の中に働く二柱の姿が書かれており、ハニヤスビコ神とハニヤスビメ神が大地や農業に関係していることを示しています。
『古事記』によると、イザナミ神が火の神カグツチを産み、大火傷を負った際に出た便からハニヤスビコ神とハニヤスビメ神が生まれたとあり、『日本書紀』では、イザナミ命が火の神カグツチを生んだときに火傷し、死ぬ直前に水の神ミズハノメと共にハニヤマヒメ命を生んだと記されます。
『日本書紀』第三の一書には、ハニヤスビコ神の名が出てきません。第四の一書によれば、イザナミ神の大便から生まれたとあります。
神名の「ハニヤス」とは埴粘(粘土)のことで、土器や瓦などの材料となる赤土を表す古語であり、埴輪の「ハニ」を表します。「ハニ」は「ホニ」からきたもの考えられており、神聖な力を宿した泥。
「ヤス」は美称であるとすると、単に田畑の土の神というだけでなく、粘土を練り形を整え、火で焼いて祭器を作っていたと考えられます。
つまり、神に捧げる神器や祭具を作るためにとくに練り込まれた粘土という意味があります。
こうしたことから、土器などの製作に関わる粘土の神、また『日本書紀』に「土神を埴安神と号す」とあるように、粘土に限らず土全般の神とされます。
土と関係の深い埴安神は、肥沃な田畑の土、陶器を作る粘土もその支配の範疇で、農業・陶磁器製造業・造園業・土木関係の職業などに縁の深い神さまです。
こうした名前に託された意味からすると、埴安神のもつ中心的な性格として、粘土を用いて作られる祭具・陶器の祖神としての姿が見えてきます。
その祭具はどのように使われたかというと、古代においてはもっとも重要だった五穀豊穣を願う祭祀です。
埴安神は水の神ミズハノメとともに生まれていることからも「土」と「水」、穀物の成育に必要不可欠なのエネルギーを表しています。
埴土(はにつち)を水で練って作られた祭具は土と水の霊力を象徴し、それを用いて日の神を祀ることによって、作物の成育に必要な土と水と太陽が揃います。
古代の人々は、このように新たなエネルギーを生む儀式を行うことによって作物が順調に育ち、豊かに実ることを願ったのでしょう。
また、埴安神は昔から田んぼの畦(あぜ)や川の堤などに祀られており、田畑の土壌を司ると同時に、堤防の堅固を保ち、川の氾濫による災害から作物を守ってもらうよう願われていました。
そうした役割からすれば、埴安神は単に土の神というだけでなく、作物の実りをもたらす神さまであると言えます。そのため食物神の豊受大神と一緒に祀られているのかもしれません。
また、もう1つ埴安神の特徴的な性格といえるのが、その出生から火の神との関わりが深いことでしょう。
『延喜式』に収録されている鎮火祭(ひしずめのまつり)の祝詞では、イザナミ命が火の神の驚異的な力を鎮める役割をする神さまとして水神とともに生んだと伝えており、埴安神の鎮火の霊力がはっきりと示されています。
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