火之迦具土神 (ヒノカグツチ)はどんな神さま?ご利益と神社紹介
出典:火之迦具土神「Art Mochida Daisuke」
神生みにおいてイザナミ神が産んだ最後の御子。火の神を産んだイザナミは火傷が原因で亡くなり、これに怒ったイザナギ命に斬り殺されますが、その際に多くの神を生みます。防火の神、鍛冶の神、陶器の神の神格を持つ神さまです。
名称
古事記 |
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火之夜藝速男神(ひのやぎはやをのかみ) |
日本書紀 |
軻遇突智(かぐつち) |
別称 |
迦遇槌命(カグツチノミコト) |
神格
火の神 | 鍛冶の神 | 防火の神 | 陶器の神 |
ご利益
鎮火 | 火難除け | 郷土守護 | 陶器業守護 |
金運 | 開運招福 |
関連神
産神 | 伊邪那岐命(イザナミ) |
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生まれてすぐに父神に切られ多くの神を生む
出典:火之迦具土神「日本の神々辞典」
カグツチ神は文字通り火の神様です。
火之迦具土神の「カグ」は火が燃えるさまを表し、別名の火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)の「カガ」は輝くさまを、火之夜藝速男神(ひのやぎはやをのかみ)の「ヤギ」は焼きを、「ハヤ」は炎が素早く辺りのものを焼き尽くす意味。
さらに火産霊は「火を産む霊」と火の精霊そのものを表しています。
カグツチ神は母神であるイザナミ神が最後に生んだ御子です。火の神を生んだときにイザナミ神は陰部に火傷を負い、それが致命傷となり死んでしまいます。
イザナミを比婆山に葬った後、妻の死に嘆くイザナギは激高し、腰にさしていた十拳剣でカグツチ神の首を切り落とします。
そのとき切られたカグツチ神の血が岩にほとばしり、岩石の神、火の神、雷神。雨の神、また多くの山の神が生まれました。この話は、火山噴火の現象からイメージされた神話と考えられます。
十拳剣の柄についた血からうまれた神 |
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闇淤加美神(くらおかみのかみ) |
十拳剣の先端からの血が岩石に落ちて生成された神 |
石折神(いはさくのかみ) |
十拳剣の刀身の根本からの血が岩石に落ちて生成された神 |
甕速日神(みかはやひのかみ) |
カグツチの死体から生まれた神 |
正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ)頭 |
脅威と恩恵を合わせ持つ火の神
人類が最初に火を意識したのは、火山や落雷による山火事などの自然エネルギーでした。
火をコントロールできるようになると、人に文化的な生活をもたらす便利なエネルギーとなります。しかし、どんなに便利になっても火本来の脅威という側面を失われません。
たとえば民間信仰で家の台所に祀られている竈の神や荒神と呼ばれる火の神がいます。
これらの神はふだん人間の生活を守り、富を与えてくれると言われます。しかし、その神を穢すようなことをして怒らせると、荒れ狂い、すべてを焼きつくし家や財産、時には命まで奪われてしまいます。
このような驚異と恩恵の二面性は自然神の基本的な性格です。中でも火の神はその振り幅が大きいですが、これは人の生活に密接な関係がある神さまだからこそ。
そのため人は古くから火の神を大事に祀ってきたのでしょう。
防火の守護神「愛宕さま」として活躍
愛宕神社や秋葉神社に祀られるカグツチ神(火産霊神の名で祀られていることも多い)は防火の神として有名です。
愛宕神社のある京都の愛宕山は、大天狗の太郎坊が君臨したと言われる全国の天狗の本拠地とされます。中世には修験道場の霊山として栄え、ここで修行した山伏たちが諸国を巡って愛宕信仰を広めたそうです。
諸国を巡る先々でカグツチ神を小高い山や丘に勧請したことから、カグツチ神は火防の神として広く信仰されるようになります。
一方の秋葉神社は総本社は静岡県の秋葉山本宮秋葉神社です。秋葉神は山岳信仰からはじまり、神仏習合を経て秋葉山大権現として信仰されるようになりました。
そもそも秋葉山大権現は一に剣難、二に火難、三に水難といわれ、中世以来武士の崇敬を集めました。その後は火難除けの信仰が深まり、火事が多かった江戸時代には火難除けの秋葉信仰は大いに広まりました。
電気街で有名な秋葉原の名前も、当時の信仰の名残を伝えるものとされます。
陶器の神さまとしての顔も持つ
カグツチ神は火を扱う鍛冶の神としての信仰もあることから焼物の神としての顔もあります。焼物を作る際に命ともいえるのが火加減です。
陶器を窯で焼き上げる工程では、最後は火の神に委ねます。日本の焼物産地の多くには、陶磁器業者の守護神が祀られる陶器神社があり、そこにはカグツチ神が祀られています。